[米FRBと為替スワップ契約を締結]
(日本貿易振興機構 (JETRO) :2020年03月24日)
為替スワップ (イメージ) |
そして、2020年7月31日、韓国銀行 (中央銀行) は、3月19日に締結した FRB との600億ドル規模の2国間為替スワップ契約期間を6カ月延長すると発表しました。
[米FRBとの為替スワップ契約期間を延長]
(日本貿易振興機構 (JETRO) :2020年08月04日)
ところが、2020年3月の時と同様に今回も韓国系マスメディアは「為替スワップ協定」ではなく「通貨スワップ協定」と表現しているのです。
[韓米通貨スワップ、6カ月延長へ…コロナ不確実性は相変わらず]
(中央日報:2020年07月30日)
「為替スワップ協定」と「通貨スワップ協定」、この2つは大きく異なるスワップ協定です。
以下に整理します。
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【為替スワップ協定】
英語では “Liquidity swap arrangements” と呼びます。
端的には締結国同士の金融機関に対して通貨を貸し出すというスワップ協定です。
為替スワップ協定では、基本的には民間金融機関に対してのみ、資金が供給されます。
これは、中央銀行同士がお互いに自国の通貨を相手国の民間金融機関に対して提供するというスワップであり、通貨スワップ (BSA) とは性格が異なります。
このため、通貨危機の際に、中央銀行などの通貨当局が為替スワップで通貨を引き出して通貨防衛に使う、といった利用方法は認められていません。
【通貨スワップ協定】
英語では “Bilateral currency Swap Agreements” (BSA) と呼びます。
端的には中央銀行同士が通貨を交換するというスワップ協定です。
中央銀行が通貨スワップ締結相手国に自国通貨を預けて外貨を貸してもらい、それを通貨防衛に使って危機を乗り切る、という使い方が一般的です。
その際、通貨スワップの金額は多ければ多いほど通貨の安定化には効果があり、また、実際に通貨スワップを発動しなくても、投機筋に対しては「わが国はこれだけの通貨スワップがある」とアナウンスする効果も期待できます。
ただし、世界の基軸通貨はアメリカドル (USD) なので、まずは、自国通貨と相手国ローカル通貨との通貨スワップ協定の場合は「アメリカドル (USD) と自国通貨との交換規模に換算した額」が重視されます。
したがって、通貨危機が発生した際にも、まず必要になるのはアメリカドル (USD) であり、通貨危機の際には、通貨スワップから引き出したアメリカドル (USD) を売って自国通貨を買い支えることになります。
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さて、今回の英語の原文を読むと、アメリカ合衆国の FRB のプレスリリースでは「liquidity arrangements (swap lines) = 為替スワップ協定」と記載しています。
[Federal Reserve announces the establishment of temporary U.S. dollar liquidity arrangements with other central banks]
(FRB:2020年03月19日)
韓国銀行のサイトでは「bilateral currency swap arrangement = 通貨スワップ協定」記載しています。
[韓国銀行 (中央銀行) のプレスリリース (韓国語) ]
(韓国銀行:2020年03月19日)
基軸通貨はアメリカドル (USD) であり、ならば、その発行元であるアメリカ合衆国の FRB の発表が正しいでしょう。
つまり、アメリカ合衆国 (USA) の連邦準備理事会 (FRB) が各国の中央銀行や金融管理局と締結し、協定を延長したのは「為替スワップ協定」であり、「通貨スワップ協定」ではありません。
このようなミスリードは、正しい認識を阻害する要因になるので注意しましょう。
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