2017-08-26

ゼリア新薬の自殺した22歳男性が受けた新人研修は洗脳と同じ

製薬会社のゼリア新薬工業 (以下、ゼリア新薬) に勤めていた男性Aさんが新入社員研修期間中の2013年5月に自死し、「業務上の死亡だった」として2015年に労災認定を受けました。
昔の軍隊のような研修 (イメージ)
Aさんの両親は、ゼリア新薬と研修を請け負った会社、その講師を相手どって、損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こしましたた。

[ゼリア新薬の22歳男性「ある種異様な」新人研修受け自殺 両親が提訴]
(BuzzFeed Japan:2017-08-08)
https://www.buzzfeed.com/jp/kazukiwatanabe/20170808
────BuzzFeed Japanからの引用ここから────
 製薬会社・ゼリア新薬工業に勤めていた男性Aさん (当時22歳) が、新入社員研修で「過去のいじめ体験」を告白させられ「吃音」を指摘された直後の2013年5月に自死し、「業務上の死亡だった」として2015年に労災認定を受けた。
 Aさんの両親は8月8日、ゼリア新薬と研修を請け負った会社、その講師を相手どって、安全配慮義務違反や不法行為に基づく損害賠償、約1億円を求める訴訟を東京地裁に起こした。
 
・・・・中略・・・・
 
 中央労基署の認定によると、労基署が注目したのは、4月10日~12日の3日間、ビジネスグランドワークス社が請け負って実施した「意識行動改革研修」。その中で、Aさんの「吃音」や「過去のいじめ」が話題になった。講師から過去の悩みを吐露するよう強く求められた上で、Aさんはこうした話をさせられていたという。
────BuzzFeed Japanからの引用ここまで────
この報道の内容から判断するに、ゼリア新薬で行われていた新人研修はカルト集団などで用いられる洗脳手法と同じです。


【洗脳手法との類似性】

細かい洗脳の方法は集団によって違いますが、大まかなところはほとんど変わりません。
洗脳は「揺さぶり」、「刷り込み」、「強化」のステップで行われます。

  • 怒ったり、罵倒することで揺さぶる
    怒ったり、罵倒したりすることにより、相手のバランスを崩し続けます。
    ゼリア新薬の今回のケースでも、
     ・いつも大きな声を出す必要があり、機敏な動きを要求され、指導員が優しくない
     ・指導員は終始大きな声できつい口調、命令口調だった
     ・指導員から「バカヤロー」といった発言もあった
    との証言があります。
     
  • 孤立させる
    家族や友だちから離し、情緒面で誰かを必要とする時は強制的に会社や講師の人間だけを頼らせます。
    ゼリア新薬の今回のケースでもAさんは会社の指定した宿泊施設にほとんどの缶詰め状態だったと弁護士が指摘しています。
    (ゼリア新薬の新入社員研修は4月1日から始まり、8月9日まで続く予定でした)
     
  • 同調圧力 (仲間圧力) にさらす
    意識的に同調圧力に操られると、社会倫理、法律などよりその組織の命令に従うようになります。
    ゼリア新薬の今回のケースでもAさんが受けた新人研修は集合研修であり、同調圧力にさらされていたものと考えられます。
     
  • 罪や悩みの告白の強要
    過去に犯した罪や過去の悩み、つらい経験を公に告白させ、その告白を利用します。
    ゼリア新薬の今回のケースでもAさんは「いじめ」を入社同期の前で告白させられています。
     
  • 日々の行動のコントロール
    食べる時間、毎日いつ何をするかを指示し、指示に従うよう強制し、馬鹿げたことをやっていると疑問に思う余地を与えないようにします。
    ゼリア新薬の今回のケースでもAさんは新人研修期間中、会社の指定した宿泊施設に拘束され、毎日いつ何をするかの指示を受けていました。
     
  • 睡眠を奪う
    睡眠や休息不足にさせるだけで、驚くほど効果的に思考をコントロールできます。
    ゼリア新薬の今回のケースでも宿泊施設で時間を拘束され、6時間の睡眠も確保できないような長時間研修を受けていたと弁護士が指摘しています。
     
  • 独自用語による言語統制
    多くのカルト集団は、孤立させるために一般的な言葉を特別な用語に置き換えたり、複雑で抽象的なものを説明する新しい言葉をつくります。
    ゼリア新薬の今回のケースでは言語統制の有無ははっきりしませんが、多くの企業は 多かれ少なかれ独自の用語があります。
     
  • 追放すると脅迫する
    対象者を繋ぎとめるために追放する(法律に触れないよう、明確にクビや解雇するとは言いません)と脅迫することがあります。
    「一度、失職すると再就職は困難」、といったことを信じ込ませることができたら、この手の脅迫の効果は高いものがあります。
    ゼリア新薬の今回のケースでは「新人研修から脱落したものと判断する」 (解雇する) との脅迫の有無ははっきりしません。
    しかし、ブラック企業では、この手の脅迫は後を絶ちません。
    下記はその一例です。
    [東京都労委、引越社関東に救済命令 不当な配置転換で]
    (日本経済新聞:2017-08-23)
    https://www.nikkei.com/article/DGXLASDG23H8H_T20C17A8000000/
     
    [アリさん引越社がついに謝罪へ…男性は2年間シュレッダー係の仕事に耐え続けた]
    (BuzzFeed Japan:2017-05-24)
    https://www.buzzfeed.com/jp/kazukiwatanabe/20170524 
 
────BuzzFeed Japanからの引用ここから────
懲戒解雇を告げるチラシを社内に掲示し、グループ会社の社内報にも掲載した。
このチラシには名前、顔写真、年齢とともに「罪状」として、「自己の権利を主張し、職責を果たしていない」などと書かれていた。
また、「世の中、まだまだ非常に厳しい状況です。『懲戒解雇』になった場合、再就職先があると思いますか? 家族は誰が養うのですか? 『一生を棒にふることになりますよ。』」といった、従業員を脅すような文言も書かれていた。
────BuzzFeed Japanからの引用ここまで────

もし、会社が研修でこのようなテクニック (洗脳手法) を使っていたら、長期間の集合研修であればそこを抜け出して、家族、弁護士、労働基準監督署などに相談しましょう。
会社でこのような研修が過去から行われている場合、残念ながら労働組合は力になってくれません。

なお、本稿で一方の主張だけというのもバランスが取れませんので、ビジネスグランドワークス社の主張も引用します。
────BuzzFeed Japanからの引用ここから────
一方、ビジネスグランドワークスの宮﨑雅吉代表は、BuzzFeed Newsの取材に次のように回答した。
 「研修内容は問題がないものでした。
  労基署からは事情聴取がなく、労災認定は事実誤認です。
  当社の研修が問題なく終了した後、ゼリア新薬で実施した研修中に不幸があったと認識しています」
研修は3日間の日程で、4月10日が朝9時から夜9時まで、4月11日は朝6時から夜9時まで、4月12日は朝6時からで、午後4時に解散した。
宮﨑代表は「いつまで天狗やっている」「バカヤロー」等の言葉はあったと認めたが、それは「本人に気付いてもらうため」だと説明。研修中に泣き出す人もいるという点については、
 「暗記したものを時間内に発表する審査があり、その審査に合格し、感激して泣き出す人はいます」
とした。
────BuzzFeed Japanからの引用ここまで────

関係者によると「軍隊みたいなことをさせる研修だ」、「途中で体調不良者が出ることもある」との証言もあり、このような研修は生産性向上につながらないどころか、従業員の健康の阻害、幸福度の低下、そして生産性の低下につながることは様々な研究で明らかになっています。

このような研修を推進する間違った考えを持った方や研修を行う会社が、考えを改めて企業文化を一新し、社会だけでなく従業員の幸福にも貢献できる集団に変わるよう、祈らずにはいられません。

また、お亡くなりになられたAさんのご冥福をお祈り申し上げます。

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